小児皮膚科

小児皮膚科では、アトピー性皮膚炎、とびひ、イボ、水イボ、おむつのかぶれなど、子どもによく見られる皮膚疾患を中心に診療します。お子様の皮膚は、角層が薄く、また皮脂の分泌量が不安定なことから、大人に比べて非常にデリケートなので注意が必要です。
また、お子様特有の皮膚症状も多く見られます。そのため、皮膚科専門医がしっかりと診察した上で、お子様お一人お一人に合った方法で治療致します。

アトピー性皮膚炎、乳児湿疹

アトピーのお子様の約60%は、血液検査をすれば5大食物アレルゲンのどれかに陽性を示しますが、実際に食べてみて皮膚が悪化するのは10%以下と言われています。食物検査が陽性だからといって、アトピー性皮膚炎の原因がその食物であり、除去さえすれば治ると考えるのはやや短絡的ではないかと思います。その食物を１週間程度食べさせないで皮膚がきれいになり、次の1週間食べさせてみて皮膚が悪くなった場合にだけ、その食品を3歳ぐらいまで控えさせると良いと考えられています。また、油分の足りない皮膚にとっては、汗もかゆみを起こす刺激物であり、暑い季節には、肘や膝などの関節の内側や首のしわの所などに湿疹ができやすくなります。 乾燥肌や掻きこわしをそのままにしていると、ハウスダストやダニなどに対するアレルギーが起こってきます。湿疹ができてしまったら、治療のためのお薬の力を借りて良い肌に戻しましょう。なお、アトピー性皮膚炎の治療にあたり、ステロイドの塗り薬に抵抗をお持ちの親御様もいらっしゃるかと思いますが、症状に応じて必要な量を必要な期間だけ使い、症状が軽くなったら薬を減らしたり、弱いものに変えたりすれば心配ありません。当院では、外用指導とともに「これはこのように～日間塗って、次は～日に受診して下さい。」といったように、詳しく具体的にご説明致しますのでご安心ください。
そして、皮膚の状態が良くなった後も保湿剤でスキンケアをきちんと続けることがとても大切です。御心配な点はいつでもご相談ください。

とびひ

とびひは、あせもや虫刺されを掻きこわした傷、すり傷、ジクジクした湿疹などに細菌が感染して起きます。これらの細菌は、健康な皮膚には感染しませんが傷ができていたり湿疹があったりすると、皮膚の抵抗力が弱くなっているため感染しやすくなるため、ご注意ください。とびひの治療は、抗生物質の飲み薬を服用し、抗生物質軟膏とリント布に亜鉛華軟膏をのばして貼付し、包帯巻きをします。また、時に耐性菌もみられるため、必要に応じて細菌培養検査で原因となる細菌を同定し、最も効果のあるお薬を処方致します。湿疹がある場合にはかゆみ止めの内服や、ステロイド外用を併用することもあります。
主に3歳以下のお子様のとびひは、ひどくなると稀にSSSS(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)を発症することもありますので早めの治療が大切です。

イボ

イボの治療は、残念ながら痛みを伴う液体窒素による凍結療法が基本です。完治までには数か月の時間を要しますが、根気よく治療を続けることが大切です。お子様が嫌がらずに通院できるよう心がけていきたいと思います。

水イボ

水イボは、イボウイルスとは異なるウイルス（伝染性軟属腫ウイルス）の感染によっておこります。肌色、白っぽいぶつぶつで、光を当てると少し光って見えます。5～6歳児に最も多く見られ、放置しておいても1～2年で大部分は消えますが、広がったり、乾燥や湿疹、感冒などで皮膚のバリア機能が低下している場合には、患児との直接の接触だけでなく、バスタオルやスポンジ、 ビ―ト板などの器物を介しても感染します。プールに入れないことや集団活動に制約がでることもあるので、早めに治療されることをお勧め致します。

水イボの治療は、摘除が基本で、専用のピンセットで水イボを1個ずつ摘まんで中身を取ります。なお、痛みを軽減するため麻酔テープもございますので、お気軽にご相談下さい。

おむつかぶれ

尿や便に含まれるアンモニア、酵素などに皮膚が刺激され、おむつの当たるところに赤いブツブツやただれができます。尚、皮膚のシワの間にできている場合やぶつぶつがある場合には、カンジダ皮膚炎の可能性もあります。
おむつかぶれの際は、おしりふきなどで皮膚を擦るのは避けて、洗面器にぬるま湯を入れておしりを洗い、亜鉛華軟膏やワセリンを塗ります。また、ひどい時には弱いステロイド軟膏を塗ります。

カンジダ性皮膚炎

カンジダ性皮膚炎は、便の中にいるカンジダ菌が、皮膚の弱い赤ちゃんのお尻について炎症を起こし、股の皮膚のシワの間にまで赤いブツブツができたり、炎症のある赤い皮膚が端の方からむけて、ただれる事もあります。 カンジダ性皮膚炎の治療は、患部の皮膚を顕微鏡で調べてカンジダ菌がいるかどうかを確認し、カンジダにに効く抗真菌剤の塗り薬を使用します。

ヘルペスウイルス感染症

1.口唇ヘルペス

最も一般的な病態で、発熱、紫外線の曝露、疲労などが誘因となりますが、実際には成人に比べて小児では少ないです。皮疹の出現する1～2日前に局所に熱感、違和感、ピリピリとした刺激感などの前兆がみられ、小型の水疱が出現し、次第に集まって膿、傷になり、やがてカサブタになり7～10日で治ります。

2.ヘルペス性歯肉口内炎

乳幼児・小児の初感染のうち90％は不顕性感染（症状がでません）ですが、ときに初感染の症状としてヘルペス性歯肉口内炎があります。口やのどを痛がり、発熱が２～５日続きます。同時に口腔内、舌、口唇などに小潰瘍、白苔が多発し、リンパ節が腫れ、口腔内の痛みにより摂食・飲水が困難となります。発熱は3～5日程度で解熱しますが、口腔内の病変の治療には約2週間ほどかかります。
食事がとれない場合には、医療機関と提携し、入院加療が必要な場合もあります。

3.カポジ水痘様発疹症

アトピー性皮膚炎に合併する例が多く、抗体を持っている方の減少（以前は成人の70％ほどでしたが今は50％程度）と、重症型のアトピー性皮膚炎の増加に伴って、学童期～成人での発症が増えています。
発熱、リンパ節が腫れるとともに、小水疱が多数出現し、水疱は破れてカサブタになります。 また、顔面にできたカポジ水痘様発疹症は、眼に及ぶと角膜ヘルペスになることもあるため、注意が必要です。3週間ほどで治りますが、大人ではくり返して起こることもあります。

4.ヘルペス性ひょう疽

指先に感染し水疱が多発します。痛みが激しく、脇のリンパ節が腫れ、発熱することもあります。乳幼児では指しゃぶりで口腔内病変から感染したり、逆に指から歯肉口内炎を生じることもあります。
ヘルペスウイルス感染症の治療は、抗ウイルス薬の内服が第一の選択肢で、初期では特に高い有効性が見られます。口唇ヘルペスなどの再発に対しては、成人の場合は抗ウイルス薬の塗り薬のみで治療可能ですが、お子様の小児の場合には、抗ウイルス薬を内服した方が良いと思われます。

水痘・帯状疱疹

水痘（みずぼうそう）

水痘は、麻疹に次ぐ感染力の強いウイルスで、飛沫感染し罹患者の約80％は5歳までに発症しています。潜伏期は平均15日で、軽い発熱とともに顔面・体幹を中心に紅斑、小水疱、膿疱が混在してきます。通常は5～7日でカサブタになります。時に傷や潰瘍になると傷跡が残ることがあります。一度かかると免疫がつくため、通常は再発することはありません。お子様の水痘はそれほど怖い病気ではありませんが、治療が遅れたり、アトピー性皮膚炎など他に皮膚疾患があったりする場合は、重症化することがあります。皮疹の拡大のみならず、傷跡を残さないこと、発熱やかゆみの軽減につながるため、積極的に抗ウイルス薬の内服をします。

帯状疱疹

帯状疱疹は、前述のとおり高齢者に多く強い痛みを伴った皮膚病ですが、最近はお子様に発症する例もあります。体の片側に軽い痛みやかゆみとともに、赤いブツブツや水疱が帯状に出現し、次第にカサブタになります。炎症が強く、皮膚に水痘同様の傷や潰瘍を作り傷跡になることもあります。

軽症の場合は抗ウイルス薬の塗り薬でも治療可能ですが、やはり抗ウイルス薬の内服を行います。
痛みやかゆみを抑えたりするだけでなく、炎症の程度を軽減して皮疹の拡大や程度を軽くすることによって傷跡になることを防ぐ効果もあります。

接触皮膚炎

1.砂かぶれ

手足の皮がむけたり、赤くなったり、ブツブツができたりします。砂遊びの後に生じるものが典型的ですが、原因は砂に限定されるわけではありません。汗による異汗性湿疹(汗疱状湿疹)と混同されて使用されているケースも多いようです。

2.ズック皮膚炎

足の裏～足の指が少し赤くなり、乾燥してカサカサとなり、やがて亀裂ができます。ゴム靴や靴に侵入した砂などの刺激が原因と考えられ、靴下を履くように指示することで軽快することもよくあります。

3.よだれかぶれ

よだれとともに付着する食べ物による刺激、よだれを拭き取る際の摩擦刺激、拭き取ることによる皮膚の乾燥など、複数の要因が重なり、口の周りはもとより、頬などにも皮膚炎を生じます。ワセリンでの保湿や、症状によっては弱いステロイドで治療を行います。

4.植物によるかぶれ

お子様は、日常生活で様々な植物と接触する機会が多く、植物が触れた部分をなぞるように線状に赤くなったり、水ぶくれができたりします。原因となる植物はウルシ、ハゼ、ギンナン、イラクサ、最近ではガーデニングブームの影響で、サクラソウ、キクなどの報告も増えています。